2013年07月25日

辻堂に通ってたころ

画像-0218.jpg


きょうも
夏をテーマにした作文です。
一緒に、夏を感じてみてください。


「休みは辻堂へ」

東京から北へ四十qほど離れた海の無い街。
私は以前ここに住んでいた。
埼玉県の県庁所在地だ。
夏になると、きまって休みは、辻堂海岸へ通っていた。
これは、その頃の話だ。

エアコンの無いコラムシフトの軽自動車ホンダN360。
薄い鉄板で出来た車だから、とにかく暑い。
窓を開けて走る。
都内では信号待ちのたびに風が止まり、
うだうだ、背中のシートに汗がこびりつく。

第三京浜に入る。
アクセルをめいっぱい踏み込んで巡航速度80qで走り続ける。
風が心地よい。鼻歌が出てくる。
やがて視界に海をとらえる。
そのとたん、潮の香りが左の窓から、
ぐるっと後部座席をめぐってから右の窓へ抜けて行く。
最高の瞬間だ。

長い道のりの末、辻堂海岸に着く。
太陽はもう真上に昇っていた。

無料駐車場に停車する。
海岸の入口に旗を立てて、冷たい飲み物とアイスキャンディを売っている。
からだの割りには小さなビキニをつけた娘二人がキャンディを選んでいた。
胸元の日焼けのあとが眩しすぎる。
ここでビールを買うことにしている。

甲羅干しをしている間にアルコールっ気はすぐに飛んで行ってしまう。
大きなタオルを敷いてサンオイルをぬって寝そべる。
目をつぶる。
太陽を瞼の前に熱く感じる。
その暑さを拭うかのように波打ち際から磯の香りがやってきて、
足元から順に上ってきて鼻先をかすめて去っていく。

遠くにチラリホラリ、水着姿の娘が浜に立っているのが見える。
長い髪が陽に焼けて金色に脱色し、締まったお尻の上まで伸びている。
大きな三脚に固定した超望遠レンズのカメラを覗き、海の一点を追っている。
その先ではサーファーが波を待っていた。

うつらうつらして、

陽が傾くと、海からの風は陸からの風に変わる。
そろそろ、けだるさが残ったからだを起こし、
しばらく海を眺めてから駐車場に戻る。

まだ火照っているN360に乗りこみ、エンジンをかける。
窓は全開。
去りがたい海の、香りを纏いながら家路につく。


海と太陽、そして
風を愛していたころ
20代のころの話です。









posted by ogawan at 19:24| Comment(2) | TrackBack(0) | 思い出 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
今晩は。
今日も蒸し暑かったですね。

夏といえば、湘南ですね。
高校生の頃、加山雄三やワイルドワンズの曲を聞いて
湘南の海に憧れていましたね。
就職してからは、もう何回も何回も湘南の海へ
行きました。

もう遠い遠い昔の出来事となりました。
Posted by 川越いも at 2013年07月25日 20:53
川越いもさん、おはようございます。
いつの時も、夢中だったことは、覚えているものですね。
あとで、思い出になるなんて考えてなかったのに。
Posted by ogawan at 2013年07月26日 09:54
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